- みたいなスクールに参加しようと思ったきっかけをおしえてください。

横浜を拠点に建築家の仕事をしながら、長野県立科町の地域おこし協力隊として、空き家対策、利活用の相談窓口などの活動をしています。以前から地元の建設会社さんと、解体現場から出てくる古材をどうにかしたいと話をしていて。廃材や古材を活用していく場を一緒につくっていこうと、動き出すことになったんです。

ものが循環していく仕組みはなんとなくイメージできるけど、実務的にどうやって人が動いていけば大量の物量をさばいていけるのかは想像がつかなかったんですよね。そんなときに、やるぞ!スクールを開催するというお知らせを見て、すぐに参加を決めました。

- 3日間参加して、印象に残っていることはありますか


オペレーションをどう回していくのか、チーム内での情報共有や連絡の取り方などを具体的に話してくれた時間は、かなり前のめりに聞いていました。kintoneやNotionをカスタマイズして使っていたり、SNSの発信の仕方も細かくルールをつくっていて。裏側であれだけのシステムが動いているからこそ、日々大量のものや人が動いていけるんだとわかりました。

リビセンを立ち上げた当初の話を聞かせてもらったときには、人数や規模感が自分たちのチームと重なるところが多くて。レスキューするときになんでもかんでも回収しない、循環させられる範囲のものだけを引き取るという話には、なるほど、と思いました。自分たちができる規模感、できる範囲を見極めながらはじめることが大事なんだと改めて確認できました。それと同時に、サポーター制度のような、自分たち以外の人も関われる仕組みも大切なんだとわかりました。

スクールに参加した2週間後に、立科町の中学校で、空き家について学ぶ授業を担当したんです。これまでも中学生と一緒に空き家を見に行ったり、まち歩きをしたりしていたのですが、今回は活用方法を検討している蔵を一緒に掃除することにしました。

中にあるものを引っ張り出してきて、使えそうなものとそうではないものをふるいに分けていく。中学生にとっては初めて見る道具なんかも出てきて、すごく盛り上がったんです。それと同時に、1件の空き家からこれだけのものが出てくるんだという体験は刺激になったみたいで。実際にものを見て一緒に話しながら、少しずつ仲間を増やしていけばいいんだというのは、リビセンを見て学んだことでもあります。

- その後の活動はいかがですか。

 
立科町は縦に細長い地形で、リゾート地として有名なエリアと、暮らしがあるエリアが離れているんです。リゾート地も大好きだけど、生活がメインになっているエリアをもっと魅力的にしていきたいと思っていて。まちのなかに滞在できる宿泊施設とシェアキッチン、そしてものが循環していく拠点を3つ、春にはオープンしようと動いています。
 
僕自身は、ずっとやってきた建築設計の経験を、どうしたら社会に還元できるか考えて立科町に来ました。自分が暮らしていく環境を、地域と関わりながら自分たちでつくっていけるのが一番いいなって。関わる人たちに責任を持って、一緒に楽しく暮らしていきたい。そういうスタンスの人が集まっていくと、結果として、自分の暮らしも豊かになっていくものだと思っています。
 
インタビュー:2023/11/6 

永田賢一郎|建築家
合同会社T.A.R.P代表

1983年生まれ。東京都出身。 
横浜国立大学大学院Y-GSA修了。
商店街の空き店舗を活用した設計事務所兼シェアキッチン「藤棚デパートメント」や空き家を活用した移住相談所「町かどオフィス」など、地域ストックを活用した拠点づくりの企画、設計、運営を行う。横浜と長野県立科町の2地域を拠点に活動。立科町地域おこし協力隊を経て2023年合同会社T.A.R.P設立。
合同会社T.A.R.P  https://www.tarpllc.jp/

写真:五味貴志